2012年10月19日金曜日

祝!地方出版文化功労賞・奨励賞、「愛だ!上山棚田団」

明日は鳥取県立図書館に行く。
「ブックインとっとり第25回地方出版文化功労賞」の奨励賞に「愛だ!上山棚田団~限界集落なんて言わせない!」(協創LLP出版プロジェクト編著/吉備人出版)が選ばれたのだ。

その表彰式がいよいよ明日。

どこにでもわいわいがやがや押しかけるNPO法人英田上山棚田団のメンバー、明日は鳥取方面に出現します。

上山棚田団の精鋭がクラウド・エディティングで完成させた受賞作に関しては明日の表彰式で、原田ボブ編集長が入魂のスピーチをしてくれる。
この本が去年の6月25日に世に出たことによって、上山棚田団の志は燎原の火のごとくこの列島に拡がっていった。その事実を同志たちといっしょに明日、再確認できるのは嬉しい限りだ。

鳥取県にはスタバはないけどスナバがある、と知事が豪語するらしいユニークな県では全国の地方出版物の祭典が「ブックインとっとり」として毎年、行われている。
1988年からなんと今年で25回目。まさに「継続は力なり」で、東京の大出版社に偏りがちな出版業界に対して地宝から風穴を開けようとしている。

明日の懇親会の予習として「ブックインとっとり」の過去の受賞作を見ていたら、見覚えのあるタイトルがあった。
1994年第7回地方出版文化功労賞は「納棺夫日記」青木新門著/桂書房(富山)だった。




「納棺夫日記」。この写真は文春文庫の増補改訂版だが。

この本は電通時代に仕事をしたアートディレクターから今世紀はじめに直筆手紙付きでいただいていた。彼は青木さんの言霊にいたく感動してどうしても僕に読ませたい、と送ってきてくれたのだった。

そのことは記憶の片隅で埃をかぶっていたのだが、映画「おくりびと」を見て鮮烈にこの本のことが蘇ってきた。
そしてこの映画の原作として、なぜ「納棺夫日記」がでてこないのかという疑問をもって文脈を調べた覚えがある。それが2008年のことだった。
それから「納棺夫日記」はまた本棚の奥にしまいこまれていた。

そして、不思議なことに今日また、この本が僕を呼んだ。
これが、上山棚田団がいうところの「縁脈炸裂」なのだろう。

地方出版文化功労賞ははっきり言って地味な賞だろう。しかしながら、1993年に富山市郊外の小さな出版社から世に出され、1994年には地方出版文化功労賞を受賞した「納棺夫日記」がその後にたどった軌跡をトレースしていると感慨深いものがある。

1996年に文春文庫になり、本木雅弘がこの本を手にしたときから映画「おくりびと」は約束されていたのだ。
今、僕の手元にある色あせた文庫本をひもといてみると、青木新門さんのこんな思いが綴られていた。
『納棺夫日記』が地方出版文化功労賞を受けることになった。鳥取の今井書店の永井社長が提唱して七年前に生まれた賞で、地方の出版社から出された出版物に与えられるのだという。そんな賞があることも知らなかったが、誠実そうな賞のように思え、快く受けることにした。その授賞式に出席するため、富山から電車で鳥取に向かった。八時間も電車に乗っていた。車窓には、北陸・山陰の秋が流れていた。ぼんやりと景色を見ているうちに、頻繁に眼に入る原色の黄色が気になった。セイタカアワダチソウの群生だった。私のイメージにある日本の秋は、ススキやアシの穂が白く光る透明な風景であった。しかし今気づくと、アメリカから帰化したセイタカアワダチソウが、日本の秋を黄色く変えていた。この北アメリカ原産の草は、種子でも繁殖するらしいが、それより根が地中を縦横に走り、しかもそこから他の植物が育つのに害になる物質を分泌しながら、自分の勢力範囲を拡大してゆくのだそうである。なんとなく好きになれない草だなと思った。そして、戦後アメリカからわが国に入って根づいた思想や思考のことを思っていた。(P194、以下略)
明日、ボブ編集長を含めた僕たち棚田団年長組は大阪から車で鳥取に向かう。西粟倉経由で行く道沿いはやはりセイタカアワダチソウが黄色い絨毯をかたちづくっているだろう。

戦後アメリカから入ってきた大量生産、大量消費の思考に包囲されてぬくぬくと育ったボブ編集長と僕は、上山棚田団と出会うことによってまったく別世界にワープしつつある。

その世界ではどうやらセイタカワダチソウは駆逐されつつあるようだ。
否。駆逐という言葉では生易しすぎる。
上山棚田団が火をつけて焼きつくそうとしている。
下から火をつける上山野焼きの凄まじさを見た人には、これがメタファーではないことが分かるだろう。

「愛だ!上山棚田団」が上梓された時点から情況はさらに深化している。
今や上山は集楽となり、この列島を個人から変革する力の集積地になりつつある。

先週はふつうの人のために江戸時代に創建された閑谷学校に伊勢谷友介を招いて大イベントを成功させた。
そして10月24日にはRSK山陽放送で「地域スペシャル・メッセージ」として上山集楽特番が放送される。さらには報道ステーションの取材も入るという。

「ひとりぼっちのボブ」が向かい風を受けとめ、雲(クラウド)の上で編集して世の中に送り出した一冊の本が大きなうねりの起点になろうとしている。

この賞を受賞した「納棺夫日記」の軌跡を見ていると、また明日から上山棚田団の善循環は一段高い雲に寄り添うことになる予感がする。

ひとりぼっちではなくなって、「君あり、故に我あり」という言葉をモットーとするようになったボブ編集長。

盟友が編んだ本がこのような賞を受賞したことを心から祝福したい。





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