脱藩して今日で1年が過ぎた。
D社のクリエーティブ・ディレクターをしていた時代はつい昨日のような気もするし、遠い昔のような気もする。
D社のクリエーティブ・ディレクターをしていた時代はつい昨日のような気もするし、遠い昔のような気もする。
つい昨日のように感じるわけは、36年間やってきたことと同じアクションを違う土俵でやっているからだ。
遠い昔のように感じるのは、そのクライアントがまったく違うからだ。
今の僕は自分がクライアントで自分がエージェンシーで自分がプロダクションだ。
「自分のために人に何かをしたい」という利他的欲求本能に基づいて走っているうちに、「世の中のために働く」ことができるようになってきた。
僕の信頼と関係性を巡る冒険はまだまだ続く予感がするが、そろそろ脱藩一周年のサマリーをしてみたい。
今、僕は「村楽LLP」にアンガージュマン(社会的自己投機)している。
そしてコンテキスター(文脈家)として「村楽」と Merry Projectを繋ぐストーリーをつくっている。
6月25日は「村楽LLPキックオフ」(美作市湯郷地域交流センター)、26日は「Merry Forest @美作上山」(上山和みの森)という大きなイベントに参加した。
美作市地域おこし協力隊と上山棚田団がホストで、全国から志を同じくする仲間たちが集まってきた。僕はプレゼンテーションと現場ディレクションというある意味、手慣れた作業を担務させていただいた。
今の僕は百姓をやるよりも、まだこの種の作業の方が得意だ。
では「村楽LLPとは?」から話していこう。
LLPとは、Limited(有限)Liability(責任)Partnership(組合)の略称で「有限責任事業組合」と訳される。
株式会社でもない、協同組合でもない新しい事業形態だ。異なる分野の専門家がパートナーを組んで、新しく事業を生み出していくとき、LLPという組織は大変有効的な制度である。
詳しくは「愛だ!上山棚田団~限界集落なんて言わせない」のP85を参照してほしい。
僕はこの本に校正家として文脈を整えるため関わった。そのおかげで内容は熟知している。
そして、「村楽」である。
村が楽しいというネーミングは美作市地域おこし協力隊と上山棚田団のムードメーカー、お気楽美々が考えた。
村落という言葉はなぜ村が落ちるのだろうか、落ちたらあかんやろ、という素朴な疑問への回答だ。
村楽LLPとは、全国地域おこし協力隊連合である。各地で活躍する地域おこし協力隊の経験値と知見、問題と解決を共有するネットワークだ。
3月7日に島根県飯南町で設立準備サミットをやった。そのときはここまでのフレームワークしかできていなかった。
そしてその4日後が311だった。大震災でこの国は大きく変わった。若者たちは大量生産、大量消費に急ブレーキを踏んで大きく旋回している。都会から地域へ。効率の経済から心地よさの経済へ。自然と信頼をベースにした新しい社会関係資本で、痛めつけられた山河の再生に取り組もうとしている。
そんな動きの中で「村楽」の目的も明確になってきた。
以下が村楽LLP代表のVENちゃんがまとめてくれた「村楽宣言」だ。
日本の村落を本当に豊かな「村楽」へ。
村楽LLPは地域おこし協力隊の全国ネットワークです。
私たちはそれぞれの地域での生業(なりわい)づくりを考えます。
百の商いができるから百商。
そして地域の技を引き継ぐから百匠。
いつでも笑顔で生きるから百笑。
「百商、百匠、百笑」が私たちのキーワードです。
村楽は田舎専門の働き方案内プラットフォームとして、
「地域のこし」に取り組み、持続可能な「懐かしい未来」を目指します。
私たちは、村楽のうねりを山から海へ、村から町へと善循環させます。
村楽LLPキックオフのコンテキスト・ブリーフを書いている時に、ふと「村楽パルチザン」という言葉が浮かんできた。
パルチザン【partisan】、フランス語で遊撃隊だ。
お仕着せとハコモノの地方行政、すなわち正規軍に対して、自己主導でしなやかに動いて信頼革命の狼煙を上げようとしている部隊がいる。この列島の山に海に空に村楽パルチザンの軍旗がなびいている。
マスコミの空爆に対して草の根のソーシャルネットワークで情報戦を仕掛ける部隊がいる。
そんなイメージを思い描くと村楽がますます楽しくなった。メリーになってきた。
村楽パルチザンの軍旗というと堅苦しいが、この遊撃隊の軍紀はただひとつ。
「楽しい事は正しい事」である。どこまでもメリーな集団だ。
「村楽」をMERRY VILLAGEと規定して、手書きのロゴをつくってくれたのはアートディレクターの水谷孝次さんだ。強い表現があるとコミュニケーションが早いのは広告もソーシャルデザインも同じだ。
2月7日に冬枯れの棚田に笑顔の花を咲かせたことがあるので、水谷さんと村楽メンバーはすっかり親しくなっている。(「愛だ!上山棚田団~限界集落なんて言わせない」P66参照)
今回の村楽LLPキックオフでは、村楽とMerry Projectが今後、どのようにコラボしていくかを再確認すべく、水谷さんと僕とでプレゼンをした。
村楽の生業(なりわい)である百商と百匠という目的を実現するのは簡単なことではない。しかめ面では辛いだけだ。そこには百笑というマナーがいる。メリーな表現が伴えば草だらけの道でもなんとかなりそうだ。パルチザンの士気も上がる。たとえ匍匐前進でも。
一方、Merry ProjectにはMerry ForestやMerry Farmingという流れがある。水谷さんが追い求めてきたメリーな森とメリーな田畑は、村楽パルチザンのテリトリーの中ではすでに存在している。
村楽とメリー、生業と表現が噛み合えばパルチザンは勝利する。
26日の「Merry Forest@美作上山」は雨の中だった。水谷さんは言う。
東北の被災地で撮影した子供たちの笑顔の傘を開く時は、いつも雨なんですよ。涙雨ですね。
それでも子供たちの笑顔はその開く場所をメリーにしてくれる。
和みの森、天空たんぼ、山水画のような棚田。
上山の人たち、大阪から来た上山棚田団、全国から参集した村楽パルチザン部隊が、水谷さんの「いち、に、さん、メリー」の掛け声でソーシャル・アートする。
思えばカタチになるのだ。
そうですよね、水谷さん。ありがとうございました。
僕の脱藩生活はこうして1年が経過した。
都人よ 来たってわれらに交じれ 世界よ 他意なきわれらを容れよ
風とゆききし 雲からエネルギーをとれ
(宮澤賢治「農民芸術概論」より)
いやー、早かったね!
返信削除脱藩一周年、おめでとうございます。
ご無事で何よりでございます。(笑)
まさに「駆け巡る小型犬」でした。
村楽LLP発足は1周年の締めくくりのイベントだったんだね。
うまいこと、できでますなあ・・・。
パルチザンのは遊撃隊って訳すんだね。
「街の遊撃手」ってコピーあったよね。
次は、「町楽」行ってみよー!(笑)
知らんで、知らんで・・・。